ルキンフォー

心理学・育児・発達障害のことなど学びつつ、ラクになれる生き方を模索中

父の存在と、私の生い立ち

気がついたら、2か月も放置していたが、その間にまた大きな心の変化があったので、久しぶりにブログを書く。

義理の父に感じ続けていた怒りの正体がようやくわかった。

 

私の実の父はおそらくアスペルガーだ。うすうす思ってはいたが、発達障害の本を読むうちに確信になった。家族の間で幾度も繰り返されてきた、全く通じない会話は、自閉症の特性を示しており、父が実家中の壁に貼り付けていた、様々な物事の手順の紙は構造化の手法だ。

それを知ったとき、私は、苦手な父に尊敬すら覚えた。父は自分の特性を知らない。75歳になる父は、誰かに生きやすくなるアドバイスを受けることもないまま、自分の苦手を克服するために、書いて頭をはっきりさせるという方法にたどり着き、それを実践してきたのだろう。頑固で例外を認めない父は、その一方で、負けず嫌いで努力家だった。

私が発達障害を知ることは、父の人生を知る意味もあったのかもしれない。

 

そんな父は、祖母から虐待を受けていたのではないかと思える節もあった。私は、共働きの両親と同居する、祖母の子守で育ったのだが、祖母が父に向ける言葉は、子供心にも、とても身内に向けるものとは思えない冷たい発言が多かった。父はそれを淡々と受け止めていたが、あれが日常化しているのはどう考えても異常だろう。

もっとも、戦後、女手一つで貧しさの中、息子二人を育て上げた祖母にとって、父はおそらく大変な子供であったと思うので、そこは同情できなくもない。また、祖母自身もかなり不遇な身の上で、そのためなのか相当に難しい気質の人で、もしかしたら、何らかの障害を持っていた可能性もある。痴呆になり、施設に入居してしまった今となっては、もう本当のことは誰にもわからないが。

 

父の話に戻る。

父は、フルタイムで働いて唯一の休みの日曜日は家事に追われる母に代わって、休日は多くの時間を子供に使ってくれた。本の面白さを教え、科学の楽しさを話してくれた。晴れた日には、弟と私を自転車の前と後ろに乗せて、近所に散歩に連れて行って、そこかしこに見えるいろいろなものの話をしてくれた。私の目には、父には知らないことがないのではないかとすら思えた。

その一方で、とてもしつけに厳しく、わずかな例外すら認められない特性は、ちょっとしたミスに対しても激しく怒鳴った。意見が合わないということは絶対に許されず、他愛もない言い合いをきっかけに、食事のテーブルをひっくり返したりする。また、酒が好きで、大量に飲んできては、気にいらないことがあると、すぐに母を殴った。不機嫌になるといつまでもイライラしているから、家族はとても気を使った。

 

こんな父がいたら、さぞ、怖い思いをしてきたと思うだろう。ところが、私には、父を怖いと思った記憶がほとんどない。弟が「子供のころ、いつも怖かった」と言うのに、私はどこか飄々としており、父を避けながらも、どこか俯瞰してみていた。

 

けれど、本当は、私はとても怖かったのだ。

いつ怒り出すかわからない父がとても怖い。怖くて仕方ない。怖くて怖くて、とても平常心ではいられない。

だから、私はこんな思い込みを作った。

「お父さんは、私が良い子にしてれば怒らない。良い子なら、怖いことは起きない」

これで、大丈夫。もし、怒られたとしたら、私が良い子じゃなかったから。ちゃんと守って良い子になれば、次は怒られない。怖い思いをせずに、静かに暮らせる。

 

そして、私は、それを守り続けた。父に怒られたこと、父の説教、誰かの噂話。

耳をそばだて、次々に吸収していく。これを守れば、良い子になれる。お父さんの気にいる子なら怒られない。

そのうち、どうしてそんなことを始めたのかも忘れてしまった。ただ、そうしてできた強固なルールだけが無意識に動き、私の行動を決めさせる。

時々、とてもとても苦しいときがあった。きっと、それは嫌だっていう思いがあるからだ。何も感じなくなればいい。そうしたら、望む人間になれる。

とうとう、私は、自分の気持ちを感じることもやめてしまった。

 

30代になったころ、私は人生に行き詰まり始めた。

例えば、ある会社に入る。最初は、良い人たちに恵まれてよかった、と思う。けれど、過剰な気遣いと我慢を続けている私は、すぐに限界が来る。「助けて」と言えればいいのだが、そこにもブロックが入る。人に頼ることは「良い子」のすることではないからだ。時には、相手が心配してくれても、「大丈夫です」と言ってしまう。それでいて、「どうして、さらに突っ込んで助けてくれないの?!」と、訳のわからないことで怒り始める。

当然、私の怒りは伝わる。次第にギクシャクし始め、やがて衝突してしまう。うまくいかなくなる人は、確かに気遣いが足りないことが多いのだが、その度に問題を起こしていたら、私の人格に問題があると評されてしまうし、何より、どんどん自己肯定感が下がっていく。

そして、その度に、もっと我慢しなければ、とさらに逆の方向に突き進んでいった。

 

長くなったので、続きはまた後日。

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