ルキンフォー

心理学・育児・発達障害のことなど学びつつ、ラクになれる生き方を模索中

ある日のカウンセリング

 

同居の義父とはもう4年も口をきいていないのだが、私はそのことで常に自己嫌悪に苛まれていた。毎日、苦しい。義父の声が下から聞こえるだけで、背筋にゾワリとした嫌な感じが走り、激しく自分を責めては、さらに激しく義父を憎む、その繰り返しだった。

 

子供が入園してから、半年あまり、自分と向き合い続けてきた私は、もうすぐ冬で普段農作業をしている義父の家での滞在時間が長くなること、夫の好意で臨時収入があったことなどから、久しぶりにカウンセリングを受けることを決めた。

カウンセリングルームまでどうやって行こうか思案していたが、このご時世で、オンラインカウンセリングを始められたとのことで、渡りに舟とお願いした。

 

 

カウンセリングでは、セッション1回につき1つ、やめたいことを決めて、それを持つことになった過去の感情にさかのぼり、手放す、という流れで行う。1回約2万円。小さい子供のいる専業主婦である私にはおいそれと受けるには少々高額だが、毎日自分を苛む苦しい気持ちから解放されるのであれば、やる価値はあると思う。

何をやめるかは、悩みを聞きながら、カウンセラーの先生と話し合って決める。私は何度も受けているので、「今日はこれをやめたいです」とはっきり伝えることもあるし、悩みを話して、先生に「ここを変えたらどうでしょう?」と提案してもらい同意することもある。

今回は「義父が、私の頭の中でずっと、私のやることなすことを責めている」ことを伝えて、テーマにしてもらった。義父は他人の批判ばかりしている人間なので、実際責めている可能性もあるのだが、もう何年も近づいてもいないので、本当に言われている訳ではない。そのせいで不快になっているのなら、とてももったいないことだと思っていた。

 

セッションでは、子供のころに、私が自分の主張を曲げなかったために父が怒り出し、家族中が巻き込まれた喧嘩の記憶がよみがえってきた。怒鳴り朝食のテーブルをひっくり返す父、私をかばって父に殴られる母、泣きわめく弟。

別段、封印された記憶でもなんでもない。我が家では、こんなことしょっちゅうだったから、まあ、そのあたりかな、と自分でも予想できていたくらいだ。

 

しかし、私の心が最も反応したのは、恐ろしくてたまらない、怒り狂う父ではなかった。突然消えた日常に震えあがり、おびえて泣く弟の姿だったのだ。

「私が自分の気持ちを通そうとして、父に反対したから。私はお姉ちゃんなのに。あの子を守らなきゃいけなかったのに…」

「あのね、ちっちゃなおねえちゃん。あなたは弟さんと同じなんだよ。わかる?子供を守るのが大人の仕事。100センチくらいの女の子に、むきになって怒る170センチの30代の男性、どう思う?」

「…ひどい光景ですね」

「そうだよね。この状況じゃ、あなたは自分の心を守るためには戦うしかなかったんだよ。『私は戦っていい』って言ってみて」

「『私は戦っていい』」

「お父さんにどうしてほしかった?」

「『お前はそう思うんだね』って、そう言ってくれればよかった、と思います」

 

 

このセッションの後、私はあれだけ気になっていた義父の動向が全く気にならなくなった。

先生は細かい説明はしなかったが、私が考えるに、弟を泣かせた罪悪感から、私は自分のわがままを通すことを悪いことだと感じるようになったのだろう。実際、私は、理解のある家族や友達といても、自分のやりたいことや気持ちを通すのが苦手だった。そんな私が「義父と口をきかない」というわがままの極みを始めたのだ。苦しくなって当たり前だろう。

これで、ずいぶんとこの家にいることがラクになった。

けれど、このことが子供との関係にまで変化を与えるとは思ってもいなかった。

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