ルキンフォー

心理学・育児・発達障害のことなど学びつつ、ラクになれる生き方を模索中

掃除のこと

実家で娘が、穴の開いていたところを引っ張って障子を破いた。

本人も何かまずいことをしたと感じたようだ。抱き留めて、「〇〇のおうちは良いけど、他所のお家で破いちゃダメだよ」と諭した。それを聞いた父が「穴開けて良いなんて教えるな」と言う。

だが、考えても見て欲しい。娘の生家の障子は、何年も前に従姉妹たちが開けた穴だらけなのだ。穴が開いていると、どうしても引っ張りたくなってしまうらしい。私が「やめて。引っ張らないで」と止める。すると、義父母が「いいよ、いいよ。子供のすることなんだから」と推奨する。子供への態度を一貫するには、そう説明するしかない。

それを聞いても、父はまだ「穴だらけの障子の家に住んでたら、子供までそれで当然だと思うようになる」と不満そうだった。

更に、言う。「俺はいつも、お母さんに言っている。お前の部屋はどれだけ汚しても良い。でも、外に見えるところだけはきちんとしておけ。めぐせっけ(みっともないから)」

 

 

私もかつてはそう思っていた(というか、父の考えをコピーして持っていたのだが)だから、誰も掃除しないこの家を、育児で何もできないときにも無理して時間を作って、やっきになって掃除した。それでも、毎日ゴミが目に入って、見る度に、自分がダメに思えてイライラした。休みたい時間も削って、障子も張りなおした。それでも家中ボロボロなので、全く追いつかない。穴を見る度、無力感に苛まれた。

そして、子供が入園し、さあ、掃除しよう、今までできなかったところも徹底的に!と動き出して気づいた。

全然、時間が足りない。

古い農家の一軒家、何十年も手付かずの場所も山のようにある。どこもかしこも、ほこりだらけ、カビだらけ。父の言うことも確かに一理あって、汚れた家に慣れている義父は、きれいにしてから入ろうという発想すらない。平気で、泥だらけの足で上がってきて、ごみを落していく。

子供は8時間保育とはいうものの、送り迎えの時間や余裕を見ると、結局7時間くらいしか自由はない。そこに食事の支度・食事・洗濯・買い物とやっていれば、掃除の時間など1時間がせいぜい。しかも、一度やれば終わりではなく、5人もいる家族が終始動き回っているのだから、当然、あっという間にまた汚れる。

 

そして、私は悟ったのである。

全部、掃除するとか無理!じゃあ、優先度をつけよう。最優先は、私が一番ハッピーになるところ!

かくして、私は、自分の使うところをピカピカに、自分のほぼ立ち入らない部屋は(それが客間でも)余裕のあるときに月1、というルールを作り上げた。そこを掃除するときは、「自分が全く使わない部屋まで掃除してあげてる私って、何て素晴らしい嫁なのかしら!」とまで自分をベタ褒めするところまでセット。

使うところがきれいなら、自己肯定感も上がる。気持ちも良い。逆に、私が気にならないということは、この家の誰も気にしないということなのだ。

子供だって、別に、穴だらけの障子だけを見つめて大人になる訳じゃない。子供の目には、まるで考え方の違う祖父母と暮らす母の姿が映るだろう。その背を見て大きくなるなら、「私がしてあげてるのに、誰も気にしない!」と被害者意識で怒っている姿と、「私ってキレイ好き!最高!」と上機嫌な姿を見せるのと、どちらがいいのかなど明白だろう。

 

 

ちなみに、父は、障子の穴が「めぐさい」から、キレイにしておかないとダメな人だと思われるそうだが、果たしてそうだろうか?少なくとも、義父母なら、穴など気にもしないだろう。

義父は外面は良いので、来客があると、玄関にモップをかけるのだが、端から見ているとかなり滑稽だ。タイルだけはピカピカだが、玄関扉はカビだらけ、両側の土壁はあちこちはげ、落ちた砂が靴箱に降り積もっている。もちろん、障子は穴だらけ。

また、本人はエアコンなどありえないと思っているから、真夏に法衣を着た僧侶の方を部屋に招き、「おい、ばあさん。早く枝豆を出せ!」とわめきながらもてなしているが、もしかしたら、枝豆なんかより、猛暑をやわらげて欲しいと思ってるかも知れないよね。人によっては、自分の妻への言い方に眉をひそめるかも知れない。

話は変わるが、ある日、夫が義父にキレていた(夫も、自分の父である義父とは仲が悪い)話を聞いたら、いつもの時間に子供を風呂に入れていたら、その前に一言もいっていなかったにもかかわらず、「俺が今出かけるから風呂に入りたいのに、お前が入ってるのかよ」と言われたそう。

そうなのです!世の中、いつもの時間に風呂に入ってるだけでいちゃもんをつけてくる人がいるのだ!もうね、私はこれを聞いたとき、心の中で父に向かって叫んだよ。

「ほら、お父さん!気なんか使ったって無駄なんだよ!だって、いつもの時間に風呂に入ってるのも気にいらない人がいるのに、万人の要望に応えるなんてできる訳ないじゃない!もう、やめやめ!!気を使って、誰もわかってくれない!こんなにやってるのに文句を言われた、って怒ってるくらいなら、自分の気分のいいようにした方がはるかに有意義じゃん!」

 

 

そして、私は、今日も全力で、自分が最もハッピーになれる場所を決めて、掃除をしているのでした。

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